2008年 03月 04日
今年2008年からyale大学の経済学部に就職するChris Blattmanが、自身のBlogでHarvard Kennedy School of Government (KSG)のMPA/IDプログラムについて詳細に評価をしている。記事では、「国際開発」に携わらんとする学生がKSGのMPA/IDを選ぶべきか否かについて、著者Blattmanと彼のKSG時代の同僚の意見に基づいて賛否両論が紹介されている。また、記事では、同様だが別種のMPAプログラムとの比較や経済学PhDとの比較も検討される。 Harvard Kennedy School of Governmentとは、近年日本で流行している国際公共政策大学院のはしりで、その中のMPA/IDプログラムとは、正式名称Master of Public Administration (International Development)が示すとおり、「国際開発」に焦点を絞ったプログラムである。Harvard KSG自体は、日本人留学生の書籍で紹介されている。 ハーバード・ケネディスクールでは、何をどう教えているか (英治出版MPAシリーズ) (英治出版MPAシリーズ) 杉村 太郎 / / 英治出版 しかし、この本はMPA/IDプログラムに関する記述が十分ではない。日本人が「国際開発」を国際的舞台で学びたいと思う場合、日本語による十分な情報はおそらく見つけられないだろうと思う。(というのは、俺自身が1年半前の出願時に発見できなかったから)。今回紹介するBlattmanの記事は、「国際開発」に関心を持つ世界中の人に有益な情報を提供すると思う。 著者のBlattmanは、6,7年前にHarvard KSGでMPA/IDプログラムに所属したあと、UCBerkeleyで経済学のPhDを修了している。彼の言葉は、経済学を根幹に据えるMPA/IDとPhDとの間で迷う人に、双方のプログラムの比較をより説得的な形で与えてくれる。彼は両方のプログラムをよく知っているからだ。もしMPA/IDとPhD(econ)との間を真剣に迷う人がいたら、KSG(MPA/ID)のDirecterを務めるDani RodrikによるBlattmanの記事へのresponseにも目を通しておいた方がよい。Rodrikは、Econ PhDは将来大学で助教授として研究をしていきたいと考える人が行くべきだという見方をしている。すなわち、実務と研究との間で揺れる学生はKSGへ行くべきだという考えが裏にあると思われる。このRodrikの考えに対して、Blattmanは、実務を志す人間がEcon PhDに行くことは悪いことではないと反論している。ちなみに、Rodrikは、プリンストン大学にあるKSGタイプの大学院であるWoodrow Wilson School of Public and International Affairs (WWS)で修士課程を修了した後にプリンストン大学のEcon PhDへ行っている。BlattmanとRodrikの両方の記事から、この6,7年の間にKSG (MPA/ID)で、developmentの授業がいかに変わったがわかる。(具体的に言うと、Blattmanの記述にあるように、RodrikによるMacroeconomic Developmentから、Rohini PandeとRodrik共催のMicro+Macroeconomic Developmentへ移行したようだ)。KSGを選ぶべきかPhD(econ)を選ぶべきかについて、BlattmanとRodrikの間に意見の一致は無い。また、ひとくちに「国際開発」と言っても、ターゲットとなる就職先によって、KSGとPhD、さらにはKSG以外のMPAそれぞれの効力は違うようだ。やはりソリッドな研究を行う部署に関してはPhDが圧倒的に強く、世界銀行やIMFのOperational Workに関してはKSGが強いようだ。キャリアへの効果に関しては評価が割れるが、BlattmanによるKSG(MPA/ID)とPhD(econ)の''コースワーク''の比較は注目に値する。Blattman曰く、Microeconomicsにおいて両プログラムの差はほとんどないが、Econometricsにおける差は非常に大きいようだ。 ちなみに、BlattmanとRodrikのふたりのBlogは、現在最も面白い経済学者のBlogだろうと思う。特にGrowth/DevelopmentあるいはPolitical Economyに関心があるのであればRodrikのBlogが、DevelopmentかつAfrican Economyに関心があるのであればBlattmanのBlogが面白いと思う。両者ともに毎日更新をしている。Blattmanに至っては、週末も休まないことはおろか、日に複数のエントリーを入れる。その一つ一つの記事は必ずしも短くない。個人的にここ最近この二つのBlogを追いかけていて思うことは、Rodrikによる開発経済学および政治経済学に関する大局的な観点が貴重であるということ、また、BlattmanによるAfricaおよびその他の地域の政治・経済の情報の密度の高さが実に有益かつ(同じ研究者にとって)刺激的であるということだ。生産が早すぎて、追いかけるのが非常に大変だが。。。 改訂:日本時間3月5日午前4時(ボストン時間3月4日午後2時)
by yoichikmr
| 2008-03-04 08:04
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