2006年 05月 16日
朝日新聞 【経済面】2006年05月15日(月曜日)付 (愛国経済 台頭する保護主義:2)中国 成長の自信「反外資」へ 今回の記事で感じた点は二つ。 まず,Foreign Direct Investment が経済発展を促進させる重要な役割を負っているということ。そして次に,経済発展がある程度進むと,先進国から技術導入をする段階から独自に研究開発をして技術革新をするようになること。 ひとつ目については,現在ちょうど研究中で,FDIが成長を促進するという実証研究を期せずして今日発見したところだった。FDIは,それ自体が成長に重要であるというよりは,むしろ Investment を通じて,技術やそれを扱う知識,さらには企業マネジメントのメソドロジーを一緒にしたパッケージが導入されることによって成長に影響を与えるのだと思われる。このFDIの点については,東・南アジアでいくつかのケースが実際に指摘されている。(Alywn Young (1992), Paul Romer (1993)) 二つ目について。技術導入の段階から技術創発の段階に移行する際の決め手はいったい何なのだろう。言い換えれば,いつどんな契機で,「もう学ぶものはない。これからは自らで作り出す」と生産サイド政策サイドの当事者は思うのだろう。そして,スムーズな移行が可能であるためには技術導入の段階においてすでに何をやっているのだろう。 中国は社会主義国家として資本主義システムを導入できないイデオロギーを持っていた。その中国が過去半世紀四半世紀に考えたのが「経済特区」というもので,この地域にはあらゆる社会主義的制約を排除して外国資本を導入してよいという「例外」が認められた。中国はそれをエンジンにして巨大な産業集積を形成し成長を牽引させてきた。今日「豊かになった中国」として描かれるのはこうした「経済特区」なのだ。 その中国が外国資本の拒絶を始めたというのは一見するところ皮肉だが,昨日の記事に書いたように国内産業や労働市場の問題があることを含めば事情は異なるのかなと思う。まぁ,そういう若干政治的な皮肉については経済発展に関する限り関係ないとは言える。経済的には,都合が良いのは中国だけではなく,これまで投資をしてきた日本をはじめとする世界の先進国も同様なわけだし。
by yoichikmr
| 2006-05-16 00:12
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