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2007年 01月 31日

Migration

ヨーロッパでは、EUへの新規加盟国から古参加盟国の西側への移住が起こる一方で、移民たちの母国への送金も大きいようだ。旧西側諸国へ移住した移民たちは、そこの国民よりも悪い生活水準にありながら、稼いだ所得を母国へ送金して、それが家族や車、家、ひいては自らのビジネスの資金にもなるという。The Economistの記者の推計では、そうした送金は年間190億ドルもの金額(価値)になり、いくつかの国では、送金が海外直接投資よりも大きな意味を持つこともあるようだ。
The Economist, "Europe's huddled masses" (Jan 18, 2007)

この記事に関して、経済学を学ぶ者として気になることは労働賃金格差だ。例えばポーランドからイギリスへ移住する一人の若者がいるとする。彼をRobertと呼ぶと、Robertはイギリスで働いて貯めた所得の一部をポーランドの家族へ送るわけだが、この送金の水面下には2つの異なる現象が意味を持つと思う。現象の第一は、ポーランドからイギリスへの単純な労働力流出というもの。旧東側諸国のひとつとしてのポーランドは、経済システムが社会主義構造から資本主義構造へ移行する過渡期にある。この過程で、国内の労働力が減少することは国内産業の振興に悪影響が出る可能性がある。現象の第二は、ポーランドで得られる職より高い給料のイギリスの職に就職可能というもの。Robertはどの国で働いても同じ技能を発揮する。経済学の言葉で言えば、彼は自分自身の人的資本(あるいは技能)の水準で仕事をこなす。経済学的に興味深い疑問は、同じ人的資本(技能)水準で仕事をするのに国ごとに給料が異なるのはなぜか?だ。そして、労働力移動を生むそうした賃金の格差がいつまでも消失しないのはなぜか?というものだ。

需給関係のみから賃金水準が決定されると考えるベーシックな理論からは、一般的に賃金格差の恒常性は説明できない。旧東側諸国から労働者が絶えることなく旧西側諸国へ流入すれば、いずれ労働力移動は止まるように賃金格差がなくなるはずだからだ。現実に賃金格差が恒常的であるなら、なんらかの力学が賃金格差裁定を阻むように働いている可能性がある。

この現実に対するひとつの回答は、生産における技術と労働者の技能との補完性によって説明できるかもしれない。補完性とは、文字通り双方を補い合う関係にあるということで、技術の欠如を技能によって補うことができる関係のことである。生産にこのような関係があるとき、より技術水準の高い企業で働くことで、労働者はより多くの賃金を得られる可能性がある。しかし、労働者のこのようなインセンティブと同じように、企業は技能水準の高い労働者を雇うことで利潤を多くすることができる可能性も持っている。だから、経済全体で、より技術水準の高い企業に低い技能の労働者ばかりが引きつけられ続けるとは考えられない。

この補完性の議論で賃金格差を説明しようとするなら、労働市場に何らかのfriction(摩擦)があるせいで、企業と労働者の効率的なmatchingが達成されない可能性を探らないといけない。つまり、企業が意図せず低技能の労働者を雇用してしまうメカニズムとは何なのかを探る必要があるということだ。

はて、それはいったい何なんだろう?
(修正;13th Feb 2007)
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by yoichikmr | 2007-01-31 13:13 | 記事


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