Do Something II

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2006年 09月 21日

バカはおまえだ

バカの壁
養老 孟司 / 新潮社
スコア選択: ★☆☆☆☆





この本は、言わずもがな、2,3年前にベストセラーになったものだ。本文中では、いろんなテーマを取り上げて養老流の主張を展開している。養老のある種の毒舌は読んでいて面白い。ただし、解せぬ点があったのも事実だ。俺はひととおり読み終えてから、第一章の『「バカの壁」とは何か』を熟読してみた。驚くべきことに、「バカの壁」というフレーズに養老が込めた思いや意味というものは正確に記述されていない。彼は、わざわざ「バカの壁」が何を言わんとするものかを説明する章を立てておきながら、それを説明することをせず、ひたすら例示を繰り返す。いくら例示を繰り返したところで、主張の根幹はわからない。それが、おれが「星ひとつ」の評価にした理由だ。

問題は、彼の言う「バカの壁」という表現が幾様にも解釈できる点にある。まずひとつめは、「世の中にはバカとマトモがいて、そのうちバカは自分の知識がすべてであって、それを超えるものを理解しようとしない、知ろうとしない。ここに、バカとマトモとの間に壁が存在する」というロジックである。それから、それとは別に、ふたつめに、「世の中の人はそもそも自分の目の前の世界だとか、自分はきちんとわかっていると思っている世界の中で判断しようとする。しかし、実際は世界はそんな狭いものじゃないんだよ。あなたが知っている世界なりを超えるところにだって別の世界があるんだよ、なのに、あなたは自分で壁を作ってそういう外界を見ないでいる。これは愚かな無知の壁だよ」というロジックだと解釈することもできる。これは似た論理に思えるけど、大きな違いだと思う。前者が自己と他者との比較であるのに対して、後者は自己内部での認識と認識を超えるものとの比較である。つまり、自分自身の中で完結する問題なのか(後者)、完結しない問題なのか(前者)、それ自体がはっきりしないことが問題なのだ。

俺が2,3年前に何かの雑誌(かしか中央公論だった気がする)で読んだインタビューでは、上記の後者のほう、自分の中での問題をテーマにしていたというようなことを養老は語っていた。つまり、彼の言っていることはソクラテスの言っていること、「自分が無知であることを知る者は、自分が無知だなどと思いもしない知識者よりも賢い」というものそのままなのであって、彼の得意技の例示オンパレードがなければ、この本はあれほどまで売れなかったはずだ。

彼は「最近の若者は…」というような言い方を多用する。けれども、このテーマはソクラテスの時代から言われているくらい普遍的にどの時代にもあったことであって、今の時代になって初めて若者が顕した特徴ではない。
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by yoichikmr | 2006-09-21 10:55 | 記事


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