Do Something II

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2006年 03月 02日

無思想への挑戦

無思想の発見
養老 孟司 / 筑摩書房





を読んだ。感想としてはつまらないがおもしろいといったところだ。何がつまらないか。言ってることが『バカの壁』とたいして変わらない。何がおもしろいか。だとしても,解剖学者としての視点や哲学的な問題と思想的な問題に取り組もうとする姿勢がかなり好意的に受け取れる。

日本には思想がないと言った丸山真男がいる。養老は日本には思想がないという思想があると言う。それだけのことを言うのにめちゃくちゃ遠回りをする。そこに飽き飽きする。一方で,随所に面白い視点の紹介も垣間見える。
風土―人間学的考察
和辻 哲郎 / 岩波書店





は,風土というものがその土地の人間と思想に影響を与えるのではないかということを論じた本らしい。これはおもしろい。養老の言葉を借りれば,思想という概念世界を形成するのは概念世界そのものだけではなくて,見て聞いて感じられる感覚世界でもある。そこに風土(地理的要因)は不可欠かもしれない。今度読んでみよう。

養老は幼少期に終戦を経験して「裏切られる」という経験をしたらしい。これは終戦を経験したあらゆる人が表現する。それまで信じてきた世界の崩壊のことを表現している(天皇ヒエラルキーから大政翼賛会,国家総動員などの一連の価値観の瞬時の崩壊のこと)。興味深いのは,高度経済成長がこの「裏切られる」の反面教師として「裏切られない世界」を追求した結果だとしている点である。この言説を俺ははじめて聞いた。養老はまた,明治維新時にも同様の「裏切られる」があって,それが維新後の日本の高成長(政治的にも経済的にも)を可能にしたのではないかということを示唆している。この点は development に関心を持つおれとしては非常に興味深い。

最後に,非常に小さな部分で,科学者たるものの姿を示している点がおもしろい。それは上に書いたように養老の言葉を借りれば,感覚世界を見て概念世界で表現するということになる。感覚世界とは現実のことであって,それを頭の中である概念世界で形にする。これを簡単に言うと「理論化」になる。形にされたものが感覚世界(=現実)で頑健でなければ,それは即座に抹消される。おもしろいのはあくまで科学者は感覚世界に目を向けるという点だ。まぁただ俺のポリシーと合っていただけかもしれないけど。

この本の内容はココで言っていることと同内容なので,気が向いたら覗いてみてくだされ。

この本は,思想の世界を垣間見たい理系の人と,サイエンスの見る現実世界を知らない文系の人にお勧めです。
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by yoichikmr | 2006-03-02 23:08 | 記事


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